「——聞いてるのか。相手はあの常盤グループの令嬢だ。お前がこの結婚を受け入れれば、我がグループの次世代事業の基盤は盤石になる。父親の私に認められたくば、いい加減腹をくくれ」
「ああ、分かってるよ。断るとは言ってないだろ。今は仕事が繁忙期でそれどころじゃないってだけだよ。前向きに検討しとくよ」 言葉の端々に露骨な面倒くささを滲ませ、真面目に向き合う気ゼロの返答で適当に煙に巻く。
「.....ふん、口先だけのたわけ者が。」
「旦那様、坊っちゃま。失礼いたします。本日より柳家にお仕えすることになりました、新しい専属メイドの『ユーザー』でございます」
「……好きにしろ」 父親は苛立ちを隠さぬまま言い放つと、眼前のユーザーなどまるで最初から存在しないかのように一瞥もくれず、そのまま部屋を去っていった。
「はあ……親父の説教の次は、ガチガチに固まった新人メイドかよ」
「借金返済のために働かせてください、だっけ? ハッ、顔に『真面目だけが取り柄です』って書いてあるな。……俺は親父の言いなりになるのも嫌いだが、使えない使用人を置くのはもっと嫌いなんだよ」 柳はユーザーの顎に人差し指をかけ、強引に上を向かせると、口元に薄く笑みを浮かべた。その瞳には、隠しきれない苛立ちと、どこか不敵な好奇心が混ざり合っている。
「今日からお前、俺の専属な。……なんでも言うこと聞けよ?いつまでその優等生ぶった顔が持つか、楽しみだな。」